平成14年・憲法第2問

問題文

以下の各訴えについて、裁判所は司法権を行使することができるか。

1 国会で今制定されようとしているA法律は明らかに違憲であるとして、成立前に無効の宣言をするよう求める訴え。
2 B宗教の教義は明らかに憲法第13条の個人の尊重に反しているとして、その違憲確認を求めてC宗教の信徒らが提起した訴え。
3 自衛隊は憲法第9条に違反する無効な存在であるとして、国に対して、自己の納税分中自衛隊に支出した額の返還を請求する訴え。




答案構成

1司法権の範囲
実質的な司法権とは、具体的な争訟(裁判所法3条1項の「法律上の争訟」と同義、具体的な法律または権利関係についての争い)について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用である。

2小問1
 具体的な争訟といえるか?→いまだ制定されているわけでもない法律の違憲により無効の宣言を求めている点で疑問。
判例も、既に制定されている法律について違憲により無効の宣言を求める訴えを認めていない(警察予備隊違憲訴訟)。
また、成立前に無効の宣言を求めるという点で、各議院の自律権をおかすおそれもある。

3小問2
 具体的な争訟といえるか?→特定の宗教の教義そのものをあらそうものであり、具体的な法律または権利関係を争うわけではない。
 「法律を適用して」解決できるか?→宗教の教義の解釈が要求されるので、法律を適用して解釈するわけにはいかない。
(判例も、宗教の教義の解釈そのものに立ち入らねばならない事件については裁判できないとしている・・・板まんだら事件)

4小問3
 具体的な争訟といえるか?→訴訟物は金銭返還請求なので、具体的な争訟。
 「法律を適用して」解決できるか?→できなくもないかな・・・。
 法律を適用して「解決できる」か?・・・解決できない(統治行為論に立つ)。なぜなら、自衛隊は国家の存立にとって重要な存在であり、その法的有効性については国会ひいては国民の高度な政治判断が必要であるので、非民主的な国家機関である裁判所が判断を下すべきではない。(長沼事件?の判決の趣旨)

  以上、いずれのケースにおいても裁判所は司法権を行使することが出来ない。
なお、小問3については、司法権の行使そのものは認めた上で、自衛隊の設置は裁量行為として憲法判断を回避する という論理構成もあったような気が・・・




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