平成13年・憲法第1問

問題文

 法律上強制加入とされている団体が、多数決により、特定の政治団体に政治献金をする旨の決定をした。この場合に生ずる憲法上の問題点について、株式会社及び労働組合の場合と比較しつつ、論ぜよ。



答案構成

一 法人の人権総説
 法人とは、法で定めた目的の達成のため特別に許容された存在。 
しかし、現実的に考えれば、法人は社会的実在として、社会の構成単位の一員としての役割が期待されている。
よって、権利の性質上自然人のみに認められる権利以外の権利が認められる。

二 法人の政治活動の自由 
1 総説
 法人の政治活動の自由は認められる。確かに、選挙権は自然人のみが有するが、法人も社会の構成単位として、独自の価値を追求する存在である以上、その価値の実現手段として、政治活動を行うことは肯定されるべきである。

2 構成員個人の政治活動の自由(特に選挙権)との関係
 ただ、あくまで投票の自由(選挙権)は自然人のみが有する権利である以上、法人の政治活動の自由はその権利を侵害しない程度に限定されるべきである。

三 強制加入の団体の政治献金
1 総説 
 強制加入の団体が政治献金(具体的な政党に対する献金という意味での)をおこなうということは、その特定の政党に対して当該団体の支持を表明することを意味する。それは、団体の個々の構成員の政治的自由と抵触するおそれがある。

2 株式会社との違い
 株式会社は営利を目的とする社団法人であり、営利の追及のため政治活動を行うことは許容される(判例)。
   また、株式会社の構成員は株主である。株主が株式会社から脱退することは自由であるから(株式譲渡自由の原則や株式の買取請求権)、法定の強制加入団体とその構成員との関係とは事情が異なる。

3 労働組合との違い
 労働組合は労働者が団結することによって結成される団体である。労働組合に政治的活動をおこなう自由があるかは問題となるが、労働組合の存在目的である労働者の地位向上のためには政治活動を行うことも許容されると解される。
 また、労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権または争議権)が憲法上保障されていることから、ある程度構成員に対する統制が許容されている(ただ、個々の投票の自由までに影響を与えることは許されない)。ただ、労働組合への加入が法的に強制されているわけではない。

4 まとめ
 強制加入の団体では、構成員に離脱が認められない点で、その活動が個々の構成員の自由にもたらす影響が大きいので、その自由も制限的に解釈する必要がある。特に、政治資金のために、団体の決議で構成員から強制的に拠出金をつのるような場合は、(団体が法的に強制加入であるだけに)個々の構成員の政治活動の自由に抵触するおそれがあるため許されないと考える(判例の見解を支持)。逆に言えば、多数決であっても、政治資金の原資に独自の財源(有志による出資など)をもって充てるような方式ならば、団体の目的にかなう範囲での政治活動の自由は許容されてもよいと考える。




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