平成11年・刑事訴訟法第2問
問題文
単独で強盗をしたとして起訴された甲は、公判において、「兄貴分乙に命じられて、強盗をした。」と主張した。裁判所は、「甲と乙との共謀を強く推認させる事実が認められる一方、共謀の事実を否定する乙の供述も虚偽とは言い難い。」と判断した。
このような場合に、裁判所は、「甲は、単独または乙と共謀の上、強盗した。」と認定し、甲に対して有罪判決を言い渡すことができるか。
答案構成
一 択一的事実認定の許否
1 択一的事実認定とは、何らかの犯罪事実についての心証が競合するが、一つの確定した事実につき心証を形成できない場合に、事実を不確定な心証のまま択一的に認定することをいう。@利益原則(「疑わしきは罰せず」の原則)との関係、A罪刑法定主義との関係、でこのような事実認定が許されるかが問題になる。
@利益原則との関係については、どちらか一つの事実につき心証が絞りきれていない点で、利益原則との抵触が問題になる。
A罪刑法定主義との関係では、競合する構成要件を合成した法律上実在しない構成要件をもとに犯罪事実を認定するのではないかという点が問題になる。
よって、択一的事実認定は原則として許されない。
2 ただ、競合する心証同士に(単独犯と共犯など)大小関係が存在する場合には、例外的に許されないかが問題になる。
この場合も、択一的に事実認定することは許されない。
二 本問の場合
択一的に事実認定